本研究は、先に上梓した『類題八雲集』付載「作者索引」を基礎データとして、関連歌書の調査・収集を行った上で、江戸後期出雲歌壇を構成する歌人データベースを構築し、歌壇の全体像の把握や、実体解明に資することを目的とする。当該年度に実施した研究の成果は以下の通りである。 1 出雲歌壇関連歌書の調査・収集 出雲歌壇の実態解明に必要な関連歌書の調査・収集を行った。調査対象としたのは、島根県立図書館・島根県立八雲立つ風土記の丘展示学習館・大阪府立中之島図書館・大阪市立大学学術情報総合センター森文庫に所蔵された資料である。特に、江戸後期の類題和歌集を調査し、附載された作者姓名録の収集を行った。 2 出雲歌壇を構成する歌人についての人物情報を抽出 収集した類題和歌集などの歌書から、作者姓名録を手がかりとして、出雲歌壇を構成する歌人について「姓・別称・身分・所在地・血縁関係・師弟関係」などの人物情報を抽出し、データの拡充を行った。 3 島根県立図書館蔵『雲陽人物誌』の翻刻・研究発表 人物情報をデータベースに加えるため、島根県立図書館蔵『雲陽人物誌』を翻刻した。文政六年(1823)に比布智神社(現出雲市下古志町)の神職である椎の本花叔(春日盈重)が、出雲国を中心とした文化人に関して記したこの資料には、歌人についての情報も多く含まれる。また、花叔の営為がいかなる意識のもとに行われたのかを明らかにすることを目的として、当該書の採録方針と自伝的部分の意義に関して考察し、愛媛大学で催された第24回古典研究会において口頭発表を行った。
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