本研究は、先に上梓した『類題八雲集』付載「作者索引」を基礎データとして、関連歌書の調査・収集を行った上で、江戸後期出雲歌壇を構成する歌人データベースを構築し、歌壇の全体像の把握や、実態解明に資することを目的とする。当該年度に実施した研究の成果は以下の通りである。 1 出雲歌壇関連歌書の調査・収集 前年度までに引き続き、出雲歌壇の実態解明に必要な関連歌書の調査・収集を行った。調査対象としたのは、島根県内所蔵資料、大阪府立中之島図書館の所蔵資料である。 2 出雲歌壇を構成する歌人についての人物情報を抽出・データベース化 収集した類題和歌集などの歌書附載の作者姓名録や、島根県立図書館蔵『雲陽人物誌』から得た情報を手がかりとして、出雲歌壇を構成する歌人について「姓・別称・身分・所在地・血縁関係・師弟関係」などの人物情報を抽出し、データの拡充を行う作業を継続した。その上で、得られた人物情報を 『国学者傳記集成』『名家伝記資料集成』『国書人名辞典』などの二次的資料によって確認することで、さらなる情報の整備を図った。 3 江戸後期出雲歌壇を構成する歌人データベースの構築 これまでの作業によって抽出・整備したデータを、国文学研究資料館にて開発された「散文検索システム」に実装するため、データの整理を行った。Visual Basic マクロを使用してマスタデータを作成する方法により、昨年度構築した暫定版のデータを更新し、江戸後期出雲歌壇を構成する歌人データベースを構築した。 4 成果の発表 上記の成果をまとめ、国文学研究資料館にて催された基幹研究「近世における蔵書形成と文芸享受」2012年度第2回研究会にて口頭発表を行った。また『雲陽人物誌』の書誌・採録方針に関する学術論文を発表した。さらに構築したデータベースを調査先でも活用できるよう、タブレット端末によるクラウド利用環境を整備した。
|