研究課題/領域番号 |
22520224
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩田 美喜 東北大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (50361051)
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キーワード | アイルランド / 演劇 / 他者表象 / 比較文化 / メディア論 / 間テクスト性 / 非標準英語 / ポストコロニアリズム |
研究概要 |
4年計画で行われる本研究の2年目に当たる当該年度は、初年度に引き続き、広く資料を渉猟するとともにそこで得られた知見を整理し、またこまめな成果発表を行うことに務めた。資料収集にあたっては、2011年3月11日に起こった東日本大震災のために本務校の研究・教育機能が一時的に大きく麻痺・停滞したため、年度の前半はあまり大きな発展が見られなかったが、8月末より9月にかけて2週間、英国ウォリック大学演劇学科による東日本大震災被災研究者支援プログラムと科研費を組み合わせて活痢し、ウォリック大学図書館を利用した研究資料収集旅行を行うことが出来たために、状況が大きく改善された。 成果発表については、同様に東日本大震災のためもあって、論文執筆は1本に留まったが、学会での口頭発表は2度行った。このうち5月末に北九州市立大学で開催された日本英文学会のシンポジウム「近代イギリス演劇におけるスペクタクルと音楽」では、18世紀のアイルランド系劇作家R・B・シェリダンが、当時ロンドン演劇界で流行していたスペクタクルの要素と自身の出自につらなるアイルランド性を、作中でどのように混血化させたかを論じた。11月に東北大学で開催された日本英文学会東北支部大会では、19世紀のメディア論とアイルランド表象について口頭発表を行った。 そのほか、論文「W.B.イェイツ『煉獄』の執筆過程に見る混血恐怖」では、『煉獄』の推敲の課程をたどることによって、アイルランド名家の没落を憂えた超自然的な詩劇のうちにイギリス・ルネサンス演劇という<正典>の痕跡を見出し、正典のことばとローカルなことばとの格闘を論じたものである。 これらの研究成果は、最終年度に執筆予定の単著に生かされる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の前半は東日本大震災のために研究の進捗状況ぶはかばかしくなかったが、夏期の資料収集旅行や2度におよぶ口頭発表などではそれなりの成果をあげ、また昨年度中には発表できなかった論文も、次年度中には発表できる予定であるため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の推進方策としては、最終目標である単著の出版に向けて具体的な出版計画を策定し、それに沿った研究および成果発表を心がけてゆくことである。今のところ特に研究計画を変更する必要性は感じられないが、次年度以降は当該年度までに発表した成果のうち英語で書かれたものを日本語に直したり、今後の成果発表は単著に直結するような文脈を考えたりといった、最終目標に向けての具体的な工夫が必要になってくるであろう。
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