本研究は、18世紀のイギリス演劇に描かれる「非標準的な英語」を喋る人物たちに焦点を当て、ことばを通じた地理的/政治的/社会(階級)などによる〈他者化〉の現象を探るものである。18世紀は英語の標準化が進んだ時期であり、演劇という文芸ジャンルはそれ以外の英語を用いる者を「周縁」として前景化するはたらきを持っていた。 だが、本研究ではさらに一歩踏み込んで、周縁的存在とされるアイルランド人劇作家たちが自ら差異化のシステムを助長するような作品を書いたケースを分析し、また日本における言語を通じた差別化の問題を比較文化的に論じるなど、一枚岩的には成り得ない「言葉と差別」の実相を明らかにした。
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