研究概要 |
本研究はアメリカ人作家マーク・トウェインの晩年期に焦点を当て、その反帝国主義言説を分析することによって、修辞の特徴ならびに思想を明らかにしようとする。それというのも、トウェイン研究史において相対的に看過されてきた晩年像はいまだ明確になっているとは言い難いからである。本研究は、その晩年像の構築に積極的に寄与することを目的とする。 単なるユーモア作家にとどまらぬトウェインは、帝国主義に立ち向かうために「笑いの武器」を提唱する。1.その「笑いの武器」をアメリカ西部のユーモアの系譜の中で検討し、それがトウェインによっていかに変容させられるか、2.「笑いの武器」の担い手に多数の一般庶民を想定する彼の階級意識はいかなるものか、それらの分析を通してトウェイン晩年の思想を検討した。 本目的は一定の成果を得たと考えている。①井川眞砂著「マーク・トウェインと労働騎士団」、アメ労編集委員会編『文学・労働・アメリカ』(南雲堂フェニックス、2010)、155-94頁、平成22年度日本学術振興会学術図書出版助成、②IGAWA Masago, "Mark Twain's Young Satan Asks a Question: Will a Day Come When People Have Developed Their Humor-Perception?" Journal of the Graduate School of International Cultural Studies 19 (2011): 1-10. ③井川眞砂著「少年サタンは問いかける―世の中の滑稽な事柄を笑い飛ばせる日が来るだろうか」、新英米文学会編『英米文学を読み継ぐ―歴史・階級・ジェンダー・エスニシティ』(開文社出版、2012)、220-48頁。 ここで得られた結論は、既存のトウェイン晩年像に修正を迫るものだといえよう。
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