「差異・外部」という主題軸にそって、系譜学的比較対象研究を進めた。シェイクスピアについては、『リチャード二世』、『ヴェニスの商人』、『オセロー』、『冬物語』、『テンペスト』、『ヘンリー八世』等を基盤としながら、①「主権」、②「良心・意識』、③「赦し」等の問題群をめぐって考察を進めた。①「主権」の主題については、『リチャード二世』における「君主制」の問題、『ヴェニスの商人』と『オセロー』におけるいわゆる「混合政体」の問題、そして『テンペスト』における魔術的「専制」の問題について焦点を当てた。②「良心・意識」の主題については、『ヘンリー八世』を中心として、『オセロー』と『ヴェニスの商人』における主体と法という視点から、考察を加えた。③「赦し」の主題については、『ヴェニスの商人』と『冬物語』を比較対照することで、法と主体という視点につなげた。哲学的主題との関連については、ロック哲学における「主体の形成」という角度から、上に触れた3つの主題との関連で、考察を進めたが、複雑にして広大なロック思想については、なお多くの課題が残らざるを得なかった。
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