本研究では「凝視」と「注意」という相互に深く結びついた人間の行為について、主に英語圏のテクストを素材にして考察をした。成果としてはっきりしたのは、一見、当たり前の知的プロセスの一部としてとらえられがちな「凝視」や「注意」が、実は私たちの知の働き方やスタイルに大きな影響を与え、ひいては人間が何を考えるかということまで左右するようなきわめて根源的な波及力をもった要素だということである。また歴史的な視点から考えても「凝視」が知の中心を占める時代がある一方、「凝視」よりも「注意散漫」や「うつろさ」が知の重要な要素ととらえられる時代があるという点は興味深い。
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