研究課題/領域番号 |
22520232
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
清水 徹郎 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (60235653)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 英米文学 / 演劇 / 西洋古典 / 印刷 / スイス |
研究概要 |
本研究計画は、15・16世紀の西欧印刷技術発展の過程において作り出された小型版印刷本によるギリシア詩のテキストの普及状況と、16世紀後半から17世紀初頭の英国詩人による受容の態様とを調査し、その影響関係を明らかにすることを目的とする。ジュネーブ・アカデミーの古典学者Francois PortusおよびIsaac Casaubonが編纂・翻訳・注解等で関与し、Jean Crespinとその後継者Eustache Vignonの印刷所から刊行され、主として当時の大学生向けに販売された十六折判(または十二折判)ギリシア詞花集が、Christopher Marloweなど当時の大学出詩人たちの間でもよく読まれていた可能性が高いことを、本研究平成24年度に指摘したが、平成25年度では、その考察の対象をGeorge Chapman, Ben Jonson, William Shakespesareにも広げ,それぞれの詩人における古典受容の特徴の差を、古典に対する詩人の意識および使用したエディションの差との二つの観点から考察を行った。Marloweの場合は、現在推測されているその詩人の状況から、上述エディションを含めた学生向け廉価本で読んだ可能性が高いと思われるのに対して、ChapmanおよびJonsonの場合は必ずしもそうではない。平成25年度の調査では、Chapmanの保守性とMarloweの奔放さとの間に見られる差と、ジュネーブ版上記学生向け普及版テキストに載録されるラテン語訳および注記との関係が、ある程度関連性があることが観察された。ただしChapmanの詩は意図的に晦渋に書かれているという問題があり、両者の関係についてまだなお最終的に結論づけるには至っていない。Shakespeareの場合を含めて、平成26年度の研究で引き続きこの問題についての調査と検証を行う計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Christopher Marloweのギリシア詩受容におけるスイスの印刷本テキストによる影響の可能性についの検証がほぼ計画通りに進んでいる。研究計画最終年度において、Chapman、Jonson、Shakespeareら同時代詩人の場合との比較・検証を深めることによって本研究計画の目的をほぼ達成できる見込みであるから。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、George Chapmanのホメーロス英訳、Hero and Leander訳、Ben Jonsonの戯曲Bartholomew Fair、William Shakespeareの戯曲Troilus and Cressida、物語詩The Rape of Lucreceなどを中心にテキストの比較を行い、1590年代~1620年代の間の英国詩人における印刷本、古典、ギリシア文化受容の特徴を、その多様性に配慮しながら包括的に記述する作業を進めることによって、本研究計画を完成に導く。
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