1490 年代以降印刷技術改良が進み、16世紀中葉に十六折判で希羅対訳古典テキストが、大学生向けに大量に流通するに至った。本研究は初期近代英国の古典文学受容に大型本読者層文化と小型本読者層文化とで明らかな違いがあると推測し、16世紀後半以降の英国詩人たちの古典受容と神話創造の様態を調べた。マーロウとシェイクスピアには後者、チャップマンには前者の影響が見え、ジョンソンは後者の傾向が強いが決めがたい。マーロウが神話創造に熱心だった一方、シェイクスピアは古典受容を同時代の心理的問題として分析的に描いたと言える。チャップマンは庇護者探しに苦労した故か、特異な形で古典の権威を必要としたと推測される。
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