研究概要 |
平成22度は17世紀の火薬陰謀事件説教のうち旧約聖書を基にした説教を研究対象とした。旧約聖書に基づく説教の解明は新約聖書に基づく説教との比較のうえでは避けては通れないからである。取り上げた説教は次の通りである。1.William Barlow,1605(Psalm 18:50)2.Lancelot Andrewes,1606(Psalm 118:23-24)3.John Boys,1613(Psalm 150)4.Robert Willan,1622(Psalm 2)5.Thomas Vicars,1633(Psalm 137:7)6.William Spurstowe,1644(Ezra 9:13-4)7.Peter Sterry,1651(Jeremiah 16:14-5)8.Ralph Vennig,1656(Psalm 136:23)9.Thomas Willson 1679(Psalm 124:1-3)10.John Sharp,1691(Micha 6:5)これらの説教はおおよその説教手順が決まっている。それは、1.火薬陰謀事件に類似した事件を旧約聖書から選ぶ。2.火薬陰謀事件の凶悪さ指摘。3.ジェームズ一世の奇跡的な救出。4.聖書の一節を事件に適応する。5.事件を未然に防いだジェームズ一世賞賛。6.ジェームズ一世救出に際し神への感謝、である。事件直後の説教は以上の手順に従い、事件の計画者・実行者ジェズイット及びカトリック教会糾弾・批判を繰り返し、彼らとの対立姿勢を強く打ち出している。特筆すべきはSpurstoweの説教である。彼はピューリタンで、その説教は、カトリック教会が進行中のピューリタン革命でのピューリタンの敵、王党派となっていることである。ジェームズ一世とチャールズ一世期とでは火薬陰謀事件への態度が宗派によって異なってくるが、英国国教会派説教家は体制派説教家であるためにその説教では事件への批判とジェームズ一世賞賛が強く訴えられている。英国国教会派説教家はカトリック教会を敵対視することにより、国家の安定を図ったのである。旧約聖書に基づく説教を解明することでその説教がいかなる説教であるかが明らかにされた。以上の研究成果を踏まえ次年度は新約聖書を基にした説教を研究対象とする。
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