研究課題/領域番号 |
22520236
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
鈴木 実佳 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40297768)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | イギリス / 18世紀 / 日記 / 手紙 / 文学 / 感受性 / 慈善 |
研究概要 |
今年度の目標は、資料分析を進めることと、文学研究の成果を学術誌に投稿するということであった。学術誌への投稿及びその準備は思うようには進んでいないが、少しずつ進展している。資料は、主にスペンサー伯爵夫人が、ほぼ毎日手紙を交わしていたキャロライン・ハウとの間の双方の書簡をはじめとして、多くの人々と交わした手紙(ごく少数の一部のものを除いて多くが出版されておらず、そのまま残っている)や彼女がつけていた記録である。 「茶の流行と警戒心: When Something Exotic ‘Singularly’ Prevailed 」が『日本ジョンソン協会年報』36(May 2012)に掲載された。これは、当初、本研究とは別の研究と考えていたが、ここで注目した経済的繁栄にまつわる警戒と悪徳としての金銭欲や物欲についての考察は、2013年1月のイギリス18世紀学会(テーマ:「信用、金銭、市場」)にスペンサーの慈善と経済的成功に値すること、援助に値する貧者についての論文発表を計画する契機となった。この学会発表では、貴重な意見・助言を得ることができ、今後の研究のために非常に参考になる。なお、今年度は海外での学会発表が1件のみに終わった。 英語による書評は、『英文学研究』89(Dec 2012)に掲載された。これは、動物寓意や物品の冒険などの奇想をこらしながら、人間社会を論じた作品を扱ったLaura BrownのHomeless Dogs and Melancholy Apesという研究書を論じた。人間と動物などの相違と類似から、人間のアイデンティティと近代を考察するという大きな目的をもった書物であったため、本研究への刺激になった。 年度末には、日本語論文であるが、スペンサー伯爵夫人の慈善と請願者たちの手紙を分析した考察を投稿し、それは審査を受けている最中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れている理由はいくつかあるが、論文執筆の速度が遅いというのがもっとも大きい。日々の忙しさに追われて、間隔があいてしまい、常に研究へのリハビリを行って時間をとっているような状態だった。集中して読み、考える時間をとることが必要であり、それができるはずだとまずは思うことが必要である。 第二の理由は、資料が膨大にあることがわかっているのに、それを網羅していないという不安がある。しかし、網羅してから何かを始めようとしても、それでは始めるのが遠い未来になってしまうであろうことはわかっている。見切りをつけて、現在手元にある資料を活かすことを考えていかなくてはならない。 執筆速度が遅いことの理由のひとつは、英語論文を準備していることにある。日本語にすれば、速度はあがることはわかっているが、英語で書き、海外の学術誌に投稿することはあきらめずに行うことにする。そのためには、ある程度長くかかることを覚悟する。ただし、その間に、日本語論文もいれていくことは、刺激となり、新たな可能性を探るきっかけとなることもあるので、否定せずに、積極的に行ってみようとする方針である。
|
今後の研究の推進方策 |
研究の進捗度に合わせて発表の予定を立てるようにしていては遅いということを認識して、発表の予定を確保することを積極的に行い、それに合わせて研究を行う。 近い未来に達成すべき口頭発表の機会と論文発表の機会を作る。次年度は、ふたつのプロポーザルが採用され、夏前に2回の海外での学会発表ができることになっているので、その機会を有効に活用し、考えていることをまとめ、学会でのコメントや助言を受けて発展させていく。また、7月の学会の後には、数日であるが大英図書館で手稿資料を読むことができるよう手配する。その準備のために相当な時間を資料を読み、考えることに費やすことになり、当然、研究が進むことになる。7月の学会については、学会成果を書物にする計画があるようなので、それに是非参加する。 細切れの時間でも活かせるように、これまで読んできた手稿資料のメモを整理して活用する。蓄積した資料を整理する。
|