18世紀の人々の日常を書きとめる欲求、コミュニケーションへの渇望、書かれたものへの愛着に注目し、特に人生の物語の提示が社会と文化のなかで果たしていた役割を考察した。それにあたって、手紙や日記や文学作品を使って、個人の内省描写や個人が自分の人生を語ることによってつくっていこうとする人間関係に着目して、個人的記録の中にみられる社会の構成員の市民としての責任感に焦点をあてた。18世紀の社会が可能にした私的な慈善の場は、金銭を介して、自らの立場の正当性を示したり、不当な状況の是正を求める人々に判断が下される場であった。小説の中での回想の使い方について、18世紀及び19世紀の流行と変化を論じた。
|