研究課題/領域番号 |
22520240
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 雄三 大阪大学, 大学院・言語文化研究科, 准教授 (10273715)
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キーワード | モダニズム / エグザイル / 移民 |
研究概要 |
平成23年度においては、1960年代から1970年代に継承されたモダニズム政治学について文献調査をおこなった。その際、重点的に調査した人物は、(1)Stuart Hall(2)Edward W.Saidの2人である。 平成23年度は、この2人をつなげる要因として(i)移民のコミュニティおよび(ii)エグザイルの意識を重点的に取り上げ、彼らが文化と政治をどのように結びつけようとしたか、その理論的・実践的な仕事を精査した。 (1)Stuart Hallは『ポピュラー・アート』の著作により、1930年代のF.R.Leavisの「評価」の方法をポピュラー文化に応用した人物である。本研究代表者は、彼の思想の根底にモダニズムがあると想定して調査を行った。その結果、この時期の彼の「評価」方法をめぐっては、エリート的だとしてCultural Studiesでは批判的に扱われることが多い。しかし、今回の文献調査では、それをモダニスト的な政治学と読み替えることで、「ふつうの人びと」が文化の消費だけでなく生産活動にも関わりうることを述べた政治活動である可能性が見えてきた。 (2)Edward W.Saidはポストコロニアル批評やカルチュラル・スタディーズにとって、もっとも重要な人物である。それは、彼が1965年に発表した『いくつかの始まり』が、後のオリエンタリズム研究を準備したことに象徴的に表れている。『いくつかの始まり』という文化批評と彼のメディアへの出演・演出が、パレスチナ問題に介入する政治的な試みであったことを詳らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
閲覧が困難であった1970年代のテレビ・ドキュメンタリーや手書きの原稿などを英国の研究機関にて閲覧することができた。そのため本研究の仮説に説得力をもたせる資料、データが入手は済んでおり、研究総括の段階に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、仮説を証明するのに必要な資料・データの90%程度は、これまでの研究で入手することができた。残りの10%ほどの資料を閲覧するために、ケンブリッジ大学および大英博物館図書室を訪れる予定にしている。 また、本研究のここまでの成果を印刷・製本して、一般公開したい。補助金の一部を、印刷・製本にかかる費用に充当したい。
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