研究課題/領域番号 |
22520240
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 雄三 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (10273715)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | サッチャー主義 / 脱構築 / スチュアート・ホール |
研究概要 |
サッチャー主義は、マイノリティや移民、不良少年を特別扱いするのではなく、「ごくふつうの人びと」の「コモン・センス」を大事にする政治を合言葉に、さまざまな非社会主義化政策を断行した。当時、ポスト構造主義言語学の影響下にあったバーミンガム現代文化研究センターは、これを「意味づけ(signification)」の闘争だと考え、ことば(指示詞)をもの(指示対象)からずらす戦略を取ったことが文献調査の結果で明らかとなった。 例えば、スチュアート・ホールはグラムシの「ヘゲモニー」概念を脱構築的に読み替えたエルネスト・ラクラウに大きな影響を受けた評論を書き始めるし、コベナ・マーサーはイーノック・パウエルの移民排斥発言を準備したものが、1960-70年代にニューレフトが繰り広げた「ごくふつうの人びと」のための政治言説であると説いている。サッチャー政権下にニューレフトのことばが着服・横領(appropriate)されるなかで、カルチュラル・スタディーズがポスト構造主義的な戦略を取りながら、サッチャー主義のキーワードの意味を変えていった過程を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究開始当初、4 年間にわたる研究期間を研究目的に準じて、前期(平成22-23 年度)と後期(平成24-25 年度)に区分した。 前期にはふたつの研究目的のうちひとつめにある、カルチュラル・スタディーズやニューレフトが20 世紀のモダニズムをどのように時代区分し、再定義を試みたかを、英米の図書館や教育機関に所蔵されている刊行物やシラバスを手掛かりに調査・分析し終えた。 後期には、ふたつめの目的である、サッチャー主義とモダニズム政治学との関係について、これも英米の図書館や教育機関に所蔵されている政治刊行物やジャーナルをかなりの程度、入手済みであり、目下その分析に着手しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
サッチャー主義の登場によって、ニューレフト運動の存在意義は危うくなった。ニューレフトたちは状況を打開する政策をいくつか発表するが、その政策のひとつが「文化唯物論批評(cultural materialism)」という理論の構築であった。しかしこの動きは、実は1930年代のモダニズムへの先祖がえりという様相を呈していたように思われる。最終年度には、この仮説を裏付けるべく、文献の調査と分析にあたりたい。 最終年度までの研究成果を単著(専門著書)のかたちで公表したいと考えている。科研費を充当することが認められている範囲で、出版・印刷費に科研費を利用する予定である。
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