近代科学としての生物学や植物学の本格的な発達は19世紀にはいってからようやく顕著になるが、これらの学問が未だ博物誌的観察や単純な分類学の水準から完全に脱していなかった18世紀後半のイギリスにおいて、森林や植物をめぐる景観の持つ表象性は、近代科学前夜の環境観を前進させるのに小さからぬ役割を演じた。その中でも重要であるのは、18世紀後半以降徐々にイギリスの風景言説においてヴァナキュラーな森や庭やコテージ建築などから構成されるヴァナキュラーな風景が尊重されるようになっていったことである。それはあるべき社会の表象としての意味を担っていたと同時に、身の回りの植物を生態系として把握することに繋がった。
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