研究概要 |
平成22年度の本研究の研究成果は以下のとおりである。20世紀前半のイギリスの女性使用人の生活と衣服について正確な情報を得るため、英国ダラム近郊のBeamish : The North of England open Air Museumのアーカイブス資料を精読し、分析を行った。次に、シルヴィア・マーロウ著、『イギリスのある女中の生涯』に書かれた情報を整理し、アーカイブス資料の情報と比較した。8月下旬には韓国ソウルへ出張し、国立中央博物館で開催された「第24回国際服飾学術会議」で、ヴィクトリア朝の女性使用人の衣服と慣習について、本研究のテーマである20世紀前半の状況に照らし合わせ、英語による研究発表を行い、日本人研究者だけでなく、韓国の研究者も高い関心を示して、質問が複数出るなど、盛況のうちに終わった。イギリスの女性使用人が実際に着た衣服の調査や当時の階下の生活慣習についての研究は珍しく、意義深いと注目された。9月からは特に戦後の使用人の数の減少とその要因について研究を進めた。10月下旬には日本バーディ協会において、トマス・バーディの小説、『エセルバータの手』における使用人の表象について、口頭発表を行った。バーディの小説を使用人に焦点を当て、分析した研究ということで、視点が新しく、また、20世紀前半にかけて、深刻さを増す使用人問題をキーワードに、文化的コンテクストを探求している点で、大変興味深い発表という評価を得た。本年1月からは文学テクストにおける使用人の「表象」に関する批評書を精読し、その一方でKazuo Ishiguro, The Remains of the Day(『日の名残り』)とEvelyn Waugh,Brideshead Revi sited(『ブライズヘッド再訪』)の2冊を取り上げ、使用人の表象を吟味した。
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