22年度前半で、それまで研究を継続していた、ウィリアム・モリスの詩人像形成におけるロマン派詩人の影響についての論文に加筆修正を加え、九州地区国立大学連携論文集に発表した。この論文は、これまで看過されてきた、モリスの後期ロマンス群におけるキーツの影響について、分析、考察したものである。今後のモリスへのロマン派詩人の影響を考える上で、足がかりになる論文となるであろうと考える。 22年度後半では、ロマン派詩人ならびにロマン派詩人以前の詩人、文人達によるさまざまな詩人像を比較検証した。 まず、18世紀の詩人像をロマン派時代のものと、詩人の定義やその社会における役割の変化について比較した。特にサミュエル・ジョンソンの諸作品における詩人像を社会的受容における問題の象徴として捉え、ロマン派詩人による詩人像形成と比較した。 ロマン派詩人による詩人像については、ワーズワース、コールリッジ、バイロン、シェリー、キーツの作品について、二つのキーワードによって分析した。すなわち、悲劇の詩人=トマス・チャタアトンと狂人である。前者については、ほぼすべての詩人が言及しており、19世紀における詩人のキャリア形成においての暗雲となっている。また、後者についても多くの詩人が言及しており、主要テーマともなっている。これら二つが詩人のキャリア形成とどのように興味深く関わっているのかをまとめた。この論文は完成間近であり、完成次第、投稿予定である。
|