研究概要 |
23年度の研究では、前年度まとめておいた、ロマン派詩人による詩人像形成についての仕上げを行った。新資料の出現や、補足部分などのとりまとめがあったため、予定よりも時間がかかったが、論文として仕上げ、「九州工業大学研究報告(人文・社会科学)」に発表、出版した。 本論文では、18世紀の詩人と読者との関係に着目し、それがロマン派詩人の詩人像形成に与えた影響を明らかにし、さらにそれがどのようにヴィクトリア朝詩人のキャリア形成において重荷となったのかを示唆した。具体的には、パトロンから公衆へ変遷する読者の問題、詩人のキャリア形成と悲劇の詩人チャタアトンの問題、想像力と狂気の問題などを扱った。結論として、社会背景と自らの想像力とで生み出された伝説的ともいうべきロマン派の詩人像は、ヴィクトリア朝詩人のアイデンティティにとって超克すべきものとなったことを示した。 さらに、23年度の後半でアルフレッド・ロード・デニズンのテキスト研究および分析を行った。(In Memoriam, The Princess, The Palace of Art, The Lotos-Eaters, The Lady of Shalott, Ulysses, The Two Voices, Idylls of the King, Maud, The Vision of Sin, Morte d' Arthur, Sir Galahad, Sir Launcelot and Queen Guinevere, Locksley Hall, Locksley Hall Sixty Years After, OEnone, St Simeon Stylitesなど。)詩人像形成と自らのキャリア形成意識との関連から、この中で特にThe Princessに着目し、ロマン派詩人からの脱却についての研究を開始した。ワーズワースなどとの影響関係を糸口にしながら、次年度に論文作成を目指す予定である。
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