本研究の目的は、これまであまり中心的テーマとして扱われてこなかった「階級」についてアメリカ文学の中でどのように扱われ、作家はどのように考えてきたかを明らかにしようとした。本研究では、アメリカの階級の要因を、「産業・資本主義」「人種・エスニシティー」「ジェンダー」そして「地域性」と、大きく4つとし、それぞれの要素がどのように作品に描かれているかの分析を進めた。この分類法の妥当性は今回の研究の重要な点であったが、3年間の研究を通して、この4つのアプローチの仕方は極めて妥当であるという結論に達することができた。これは重要な成果であると言える。 その中でも本年度は、特に「人種と地域性」に重点を当てた。具体的には、本研究の中心的な指導者である『階級を再考する』の著書マイケル・ギルモア教授のもと進めたが、本年度は現在最も最前線でヒスパニックやネイティブアメリカンの問題に積極的に取り組んでいるカリフォルニア大学サンディエゴ校で、同校のエスニック研究センターのカーティス・マレッツから多くの貴重な情報と本研究へのアドバイスを得ることができた。特にマレッツ教授は人種による階級問題は政治と大きく関わっているので、その方面からの考察の重要性を指摘してもらったのは有益であり、今後の研究に生かしていきたい。 アメリカの階級は複雑である。様々な要因が結びつき出来上がっている。そのような複雑な構造を持ったアメリカの階級社会をできるだけ明快な形で提示し、アメリカ社会の本質の迫りたいと思っている。 最終年度は、これまでの成果をまとめる段階であり、個々の作家レベルでのまとめを行っている。研究会・学会等、さらには論文等での発表を始めている。今後1、2年をかけて、今回の研究で得られた成果をまとめ、アメリカ文学史に沿って全体を俯瞰するような著作として集大成することに専念する予定である。
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