研究概要 |
顕微鏡と19世紀に大流行をみた博物学(植物学)は密接な関係にあるが、この影響関係を主として考察した。とくに、極微少の世界を探求する顕微鏡的想像力におけるレンズの媒介性の問題を、William Blake, Charlotte Smith, Alfred Tennyson, 1st Baron Tennysonに探り、さらに19世紀を代表する博物学者Philip Henry GosseとGeorge Henry Lewes, ふたりの「顕微鏡的博物学」(microscopic natural history)の相違に注目しつつ、この問題を考察した。顕微鏡下の世界を描写するに際して、レンズの向こう側にも神の存在を認め、まるでレンズの媒介性を忘却・無視もしくは抑圧するのがゴスだとすれば、他方、レンズという第3項を問題視するのがルイスである。双方の顕微鏡的博物学に対する異なった姿勢を比較検討し、それがアリストテレスの「ある透明なもの(ディアファネース)」が孕む、相反するふたつの特徴──透明性と不透明性──と共振することを明らかにした。最後に、レンズが19世紀文学・文化において重要な要素であったことを示した。
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