研究課題
2010年前半は、前年度から個人的に行なっていた研究で、Sol Plaatjeの研究に関連あるいはその基礎となる研究の発表が続いた。『20世紀英文学研究IX:現代イギリス文学と場所の移動』に執筆した論文やそれを発展させた論文Journal of Commonwealth Literature掲載)においては、アフリカ系ディアスポラに関する基本的な理論(Plaatje研究には必須)を理解し、「「南アフリカの小さなヴィクトリア女王」が"New Woman"を目指すとき:Olive SchreinerのFrom Man to Man」(1926)における性と人種を巡るポリティックス(イギリス女性史研究会での口頭発表)においては、19世紀末から20世紀初頭にかけて南アに存在した白人女性参政権運動とアフリカ人男性参政権(Plaatjeも保持)剥奪の過程について議論した。こういった研究を踏まえた上で、夏から本格的なPlaatje研究に入った。ボーア戦争後にアパルトヘイト体制が確立されるなか、彼が英国や米国で南アのアフリカ人の窮状を訴え、Marcus GarveyやW.E.B.Du Boisと交流するなかで、彼が意識する「想像の共同体」が「大英帝国」から「氾アフリカ主義的な共同体」にどのような形で変化した(あるいは変化しなかった)かというテーマで研究を行なった。主にMarcus Garveyとの関連でGlobalizing the Empire, Nation and Native : Marcus Garvey's Information Network from a South African Perspectiveという題目でOxfordの学会にて口頭発表している。同様のテーマで別の視点から「「世界の中心」から兄弟愛を叫ぶ:大英帝国と黒い大西洋の交差路で生まれ続けるソル・プラーキの「想像の共同体」」という論文を執筆し、共著の形で2011年度に刊行予定である。この2つの研究で明らかになったのは、自分が「想像する」共同体から疎外されつつもそれを代表/表象し続ける植民地主体としての彼のidentityの複雑さであった。
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Journal of Commonwealth Literature
巻: Vol.45 No.3 ページ: 457-469