研究課題/領域番号 |
22520266
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
溝口 昭子 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (00296203)
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キーワード | 英語文学 / 南アフリカ / 大英帝国 / 氾アフリカ主義 / 想像の共同体 |
研究概要 |
2011年前半は、Sol Plaatje研究を俯瞰する研究の関連で2011年7月刊行の『オルタナティヴ・ヴォイスを聴く』にてアフリカ英語文学、特に南アフリカ文学を、環境、移動、土地への帰属というテーマで執筆した。 また、6月に英国のリバプールで開催されたAfromodernism 2という学会に、Plaatjeの小説Mhudiに現れる植民地的近代がどのようにモダニズム的要素を示しているかを論じた論考Modernism and Colonial Modernity in Sol Plaatje's Mhudiの要旨を送り受理された。 夏には英国および南アフリカにてPlaatje関連の資料収集を行った。特に、彼が行ったツワナ語(彼の母語)の諺の翻訳および編纂や、シェイクスピア劇のツワナ語への翻訳の意味、そして彼の作品群の評価の1980年代以降の移り変わりについて資料を収集し、アフリカ人が「植民地近代」を生きぬく際に、「近代」の何を受容し、そしてどの「伝統」が生き延びるべきとPlaatjeが考えたのか、その世界観を探った、 また、2012年3月刊行の『<終わり>への遡行-ポストコロニアリズムの歴史と使命』を共同編集し、そこに「「世界の中心」から「兄弟愛」を叫ぶ-大英帝国と黒い大西洋の交差路で生み出されるソル・プラーキの「想像の共同体」」という論文を発表した。ここではボーア戦争後にアパルトヘイト体制が確立されるなか、彼が英国や米国で南アのアフリカ人の窮状を訴え、Marcus GarveyやW.E.B.Du Boisと交流するなかで、彼が意識する「想像の共同体」が「大英帝国」から「氾アフリカ主義的な共同体」にどのような形で変化した(あるいは変化しなかった)かを論じたものである。自分が「想像する」共同体から疎外されつつもそれを代表/表象し続ける植民地主体としての彼のidentityの複雑さを考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
体調を崩したため、研究に遅延が生じた。特に計画通りにMhudiに研究を進めるため、手始めとしての英国での学会発表を予定していたが出席が叶わず、Mhudi研究を深めることができなかった。「想像の共同体」と「多言語と翻訳/通訳」についての資料収集は行えたが、翻訳(ツワナ語から英語への)作業を委託するところまで至らず、まだ成果の発表という段階ではない。ただし、Plaatjeについての包括的な論文は執筆済みなので基礎的な研究は行えている。
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今後の研究の推進方策 |
24年度の課題に安易に移行せず、前年度の課題であった「Mhudi研究」、および「想像の共同体」と「多言語と翻訳/通訳」研究について引き続き研究を進める。「Mhudi研究」については現在、海外の学会発表に申請中である。 後者についてはさらに資料収集、翻訳委託(ツワナ語から英語への)考察を深める必要があり、その成果の発表はMhudi研究にめどがつき次第行う。24年度に着手するThomas MofoloのChaka(1925)およびH.I.E.DhlomoのH.I.E.Dhlomo:Collected Works(1985)についてはMhudiのと比較する方向で関係資料等の読み込みに入る。
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