研究概要 |
研究休暇を利用し、2013年4月から2014年3月まで英国に滞在し、20世紀初頭の南アフリカ文学についての資料収集を行い、学会発表、論文執筆等を行った。想像の共同体と移動の問題を扱ったアフリカ文学紀行文 "'Yellow' Skin, ‘White’ Mask, in Whose Lands?” をColdnoon: Travel Poetics (International Journal of Travel Writing) (2巻2号, 2013年刊行)に発表した。2013年9月には"'Modern' Tradition, ‘Usable’ History and ‘Imagined’ Community in Sol Plaatje’s Mhudi”という題目で学会History, Postcolonialism and Tradition : The Postcolonial Studies Association Conference 2013 (於Kingston大学)にて発表を行った。また、論文"'Modern' Tradition and an Alternative 'Imagined' Community in Sol Plaatje's Mhudi"を『黒人研究』(83号, 2014年3月刊行)に発表した。この学会発表と論文では、南アのアフリカ人作家Sol Plaatje の植民地的近代への批判とナショナリズムが展開される小説Mhudi(1930)において、彼がパン・アフリカニズムに影響をうけた新たな近代性を帯びた「想像の共同体」構築に向けてどのように自らが帰属する民族の歴史と伝統を表象したかを論じた。ここで、アフリカ系知識人が「想像の共同体」構築の際に新たに創造した「伝統」「歴史」が、「原住民行政法」によって植民地機構として再構築される「部族制度」に対抗する意味で非常に重要であることが明らかになった。それを他の南アのアフリカ系知識人H. I. E.Dhlomoの作品に応用した結果が津田塾大学で2014年4月に行う発表およびそれを発展させた2014年6月28~29日に開催される黒人研究の会60周年記念大会に発表が予定される"Trajecory of an 'Imagined' Community at the Crossroads of the British Empire and the Black Atlantic in H. I. E. Dhlomo's Historical Plays in the 1930s"に反映されている。
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