平成22年から24年度にかけて実施された本研究では、これまで申請者が行ったオーストラリア(以下、適宜豪)における日本及び日本人の描写変遷の研究成果を生かしつつ、背景となるこの研究をさらに進展させて、21世紀に入ってすでに10年以上を経たあいだに日豪関係が文学にいかに表象されたか検証することを目標とした。3年間にわたりそのための日・豪両国における資料収集や聞き取り、面談調査を行い、それらの資料を分析考察し、論文執筆にあたった。これはそれまでの研究と併せて単著として刊行することを最終目標とした。 24年度は8月にキャンベラのオーストラリア国立大学(ANU)、国立図書館、戦争記念館、公文書館、国立音声映像文書館等で一次資料及び批評・研究書や、関連和書等を補足収集し、ANUの田村恵子研究員と面談、研究打ち合わせを行った。これらの収集資料の分析及び研究打ち合わせをもとに、関連論文執筆と口頭発表原稿準備を進めた。さらに、最終的な「オーストラリア文学にみる日本人像」としての取りまとめを行い、書籍として刊行するために、25年度科学研究費・研究成果公開促進費に応募した。(採択) 上記の成果公表の一端として、集英社『コレクション 戦争と文学』15巻別報に「オーストラリア文学と戦争」の一文を掲載した。また共著書『日本とオーストラリアの太平洋戦争―記憶の国境線を問う』(御茶の水書房、第10章担当)が6月に刊行された。 7月には東京大学アメリカ太平洋地域研究センター主催のシンポジウムでパネリストとして発表(英語)した。12月にはアデレード大学で、文学史的に見たブルームと和歌山県太地町の19世紀からの関係を、21世紀の日豪関係及び日本人移民史のコンテクストで問い直す内容の口頭発表(英語)を行った。
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