研究課題/領域番号 |
22520273
|
研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
栂 正行 中京大学, 国際教養学部, 教授 (10163958)
|
キーワード | インド / ベン・オクリ / 英語小説 / クシュワント・シン / 近代 |
研究概要 |
(1)ベン・オクリにおける近代 ベン・オクリの近代は、初期のリアリズム的作品にその典型が見られる。しかし、オクリの作品の真価はマジック・リアリズム的作品にあり、その代表作が『飢えたる道』以下の三部作である。ここでは、主人公の少年個人の成長の物語としての近代現象とナイジェリアの独立という近代現象が同時並行的に提示される。それが「道」という表現に凝縮されているが、一方、その道は、ただ単に目的地を持ち、前へと進む道ではなく、住人を喰らいつくすおそろしい、非近代的な道でもある。本年度はオクリの両義的近代の特質を、具体的な作品に沿って検証した。オクリの「道」の特徴を共著『ヨーロッパ文化の光と影』所収「近代はざまの『完璧な一日』」で考察した。 (2)クシュワント・シンにおける近代 ナイポール、オクリについては、それぞれ全体像の把握が終了しているが、シンについては未読の作品もある。社会小説については『パキスタン行き列車』、『デリー』、『水葬』を中心に据えつつ、その周辺にある作品の整理に努めた。評論についても、一作品ずつ検証し、シンの近代観を明らかにした。特に、インドの英字新聞等に発表のコラムなどの収集と読解に力点をおいた。『デリー』において明らかなように、シンの近代観が直線的なものでない。近代を検証しつつ、その枠組みからもれる部分を柔軟に捉えることが本研究成功の重要な鍵と認識している。インドの歴史、政治、社会、宗教、教育などさまざまな分野の文献を渉猟した。シンの近代観の一面を共編著『現代インド英語小説の世界』所収「いつの間にか非近代にのみこまれる近代について」で考察した。 なお今年度は、当初の予定から若干の変更を行い、出張を控え、資料の収集と読解に力点をおいた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
V・S・ナイポール、ベン・オクリ、クシュワント・シンそれぞれについての論考が一通り完成し、さらなる問題点を発見する段階へと進展しているため。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度はクシュワント・シンの研究をさらに進める。シンが『デリー』で実践したオムニバス形式の起源を、インド、さらにインド西方のペルシャ等にまで射程を延ばして考察する。
|