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2011 年度 実績報告書

アフリカンアメリカン口頭文化の総合的研究

研究課題

研究課題/領域番号 22520277
研究機関立命館大学

研究代表者

ウェルズ 恵子  立命館大学, 文学部, 教授 (30206627)

キーワードアフリカ系アメリカ人 / 黒人文学 / アフリカ系アメリカ人文化 / 口頭文化 / 声の文学 / African American Culture / Oral Tradition / Folksongs & Folktales
研究概要

●「笑いと回復のための語り:ゾラ・ニール・ハーストンの『騾馬と人間』を読む」では、ハーストンが聞き取り収集した黒人民話アンソロジー『騾馬と人間』を精読し、ハーストンの黒人理解を紐解きながら笑いと生きるためのエネルギーの回復について考察した。民話の語り手は、絶望的な状況で生産性を回復し希望を繋いで生き続けるために、語りによって価値観を転覆させて笑い、「よい地獄」という矛盾した場所を肯定する。語り手は必然的に、地獄は最悪だという通常の価値観と大丈夫な地獄があるという彼らの信念との二重性を負う。黒人の民話にトリックスターヒーロー以外のヒーローがいないわけは、トリックスターが異なる価値の世界を行き来するからで、黒人民話の享受者らは価値観の転覆をして世界を変えてのみ、希望が持てるのである。『騾馬・・』所収の民話には、ストーリーの中に力関係もモラルも固定しない変幻型の価値観を観察でき、強靭な笑いによってもたらされるエネルギーの回復と対立者への許しを意識できる。●『アメリカ黒人霊歌19世紀・20世紀初頭文献復刻集成』は、黒人霊歌研究に重要な文献を最も古いものから20世紀初頭まで集めた資料集である。当該資料は手に入りにくいので、集成の出版は研究の発展に寄与するところが大きい。解説と解題では、黒人霊歌の歴史と変容がを明らかにしている●『バラク・オバマのことばと文学-自伝が語る人種とアメリカ』には「恐怖を越えて希望へ-物語と歌と音楽と』を執筆した。オバマの自伝の文学的要素を読み解きながら、黒人音楽との関連を指摘している。本論文においては、現実の「声」と比喩的意味での「声」の両方が人々のつながりを強め、希望につながっているというオバマの観察を読み取っている。●全体として2011年度の業績においては、アフリカ系アメリカ人にとって歌詞を含む口頭文学の存在が、希望の持続に大きく貢献していることが明らかにされた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

民話分野で研究することが予想以上に多かったため、ラップ、トーストなどの資料調査に時間が取れなかった。
一方、民話分野の研究を推し進めることには大きな価値があり、必ずしも達成度において劣るというわけではない。

今後の研究の推進方策

2012年度は Joel Chandler Harrisおよび初期の民話収集について、「声の文学」の観点から論考をまとめ、民話研究の出発点を確認する。また、黒人民話資料の詳細なリストを作る。それによって、可能な民話研究の全容を把握する。年度後半にはラップやトーストの研究の速度を上げ、2013年度に研究成果を著作にまとめる準備にかかるとともに、アフリカ系アメリカ人の口頭文学の全体像を描けるようにする。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 笑いと回復のための語り:ゾラ・ニール・ハーストンの『騾馬と人間』を読む2011

    • 著者名/発表者名
      ウェルズ恵子
    • 雑誌名

      立命館大学国際言語文化研究

      巻: 23-1 ページ: 15-29

    • 査読あり
  • [図書] アメリカ黒人霊歌19世紀・20世紀初頭文献復刻集成2012

    • 著者名/発表者名
      ウェルズ恵子(監修・解説解題)
    • 総ページ数
      全3巻(解題1-19)
    • 出版者
      ユーリカプレス
  • [図書] バラク・オバマのことばと文学-自伝が語る人種とアメリカ2011

    • 著者名/発表者名
      里内克巳(編著)、ウェルズ恵子, 他3名(著)
    • 総ページ数
      227-277(281)
    • 出版者
      彩流社
  • [備考]

    • URL

      http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/lcs/kiyou.html

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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