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2011 年度 実績報告書

中世英文学における異文化接触

研究課題

研究課題/領域番号 22520279
研究機関関西大学

研究代表者

和田 葉子  関西大学, 外国語学部, 教授 (00123547)

キーワード中世英文学 / アイルランド / MS Harley 913 / フランシスコ修道会 / 托鉢修道士 / 諷刺詩 / 英雄詩 / 中世史
研究概要

これまで、中世英文学はイングランドにおいて中英語で書かれた作品群であると考えられがちであった。しかし、実際にはウェールズ境界地域やアイルランドで書かれた作品が少なくない。本年度は、1330年頃、アイルランドにおいて筆写および編纂された写本、London,British Library MS Harley 913に焦点を合わせた。およそ縦140ミリ、横95ミリという小さなサイズの64葉の写本で、中英語の他、フランス語、ラテン語による作品から成る。フランシスコ修道会と深く関わる内容の記録も含まれており、多くのフランシスコ托鉢修道士が、説教の参考とするためのポケットサイズの写本を携帯していたことも知られていることから、MSHarley913の編纂者兼写字生もフランシスコ会の托鉢修道士であったと考えられる。この写本が成立した当時のアイルランドにおける、植民者であるノルマン系アイルランド人と土着のゲール系アイルランド人の関係、そして定住場所を持たない托鉢修道士と修道院生活を送る修道士との関係を中心に、特に、諷刺詩The Land of Cokaygne, Piers of Bermingham, Satireの3つの作品について考察し、研究成果を発表した。
夏季休暇を利用して、ロンドンの大英図書館においてHarley913の写本を調査するとともに、英国ケンブリッジ大学図書館、アイルランドのダブリンにあるアイルランド国立図書館、およびこの写本が成立したと考えられるアイルランドのウォーターフォード市立図書館において、この写本が成立した14世紀の、特に政治と宗教の状況に関する資料を収集した。イギリスとアイルランドでは、現地の中世英文学研究者や中世西洋史の研究者とディスカションし情報交換する機会をもつことができた。日本では入手が困難な資料を、著作権の許す限りにおいてA4サイズにまとめてコピーし、帰国しても研究が続けられるようにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度、とりあげたMS Harley 913の中の3つの作品には、14世紀のアイルランドを知ることによってしか理解できないことが多く含まれており、これまで、論じられてこなかった作品と社会背景の関係を明らかにすることができた。

今後の研究の推進方策

本年度の研究により、MS Harley 913の編纂者/写字生が何故、一見、まとまりのないように見える作品群を筆写したのか、そして、その人物像が、この写本に収録されている作品全体を理解することにより、明らかになる可能性を強く感じたので、同写本の他の作品を当時の社会背景に照らして、読み、考察を続けてゆく方針である。来年度は、ラテン語を含んだ、いわゆるマカロニックな作品について研究する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 2011

すべて 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [学会発表] 中世アイルランドの風景と音と匂と-London, British Library, MS Harley 913の中英語詩Satireについての一考察2012

    • 著者名/発表者名
      和田葉子
    • 学会等名
      関西大学東西学術研究所研究例会
    • 発表場所
      関西大学東西学術研究所(大阪府)
    • 年月日
      2012-02-20
  • [学会発表] 英雄か極悪人か-Piers of Bermingham成立の社会背景について2011

    • 著者名/発表者名
      和田葉子
    • 学会等名
      日本中世英語英文学会
    • 発表場所
      大東文化大学(東京都)
    • 年月日
      2011-12-03
  • [図書] 関西大学東西学術研究所六十周年記念論集(「コケインの国を求めて-空飛ぶ修道士とその餌食についての一考察」)2011

    • 著者名/発表者名
      関西大学東西学術研究所
    • 総ページ数
      281-291
    • 出版者
      関西大学出版部

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公開日: 2013-06-26  

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