研究課題/領域番号 |
22520281
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研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
吉川 史子 広島修道大学, 商学部, 教授 (50351979)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 神秘主義 / 中世英文学 / 談話ストラテジー / ジャンル / ディスコースマーカー / 史的語用論 |
研究概要 |
研究計画に従って、Ancrene Wisse と比較する目的で、Nicholas Love の The Mirror of the Blessed Life of Jesus Christ の談話ストラテジーの調査分析を進めた。これらの作品における接続副詞 nu (now)の使用について調査分析した結果を、チョーサーの『カンタベリ物語』中の「教区牧師の話」、『不可知の雲』、ノリッジのジュリアンの Revelations of Divine Love などの神秘主義作品における nu (now) の調査結果とともにまとめて、スイスのチューリッヒ大学に於いて行われた The 17th International Conference on the English Historical Linguistics で、‘Adverbial Connectors and Topic Shift in Middle English Religious Prose’ の題目で8月21日に発表した。 また、上記のテクストにおいて使用頻度の高い内容語を調査し、神秘主義作品のキーワードとされる語の頻度に注目して分析した結果を、慶応義塾大学で行われた The 4th International Conference of the Society of Historial English Language and Linguistics に於いて、‘How is a Text Classified in Mystical Writing? Typical Vocabulary and Expressions in Middle English Mystical Writing’ の題目で9月3日に発表した。また、その発表内容をまとめて12月末にこの学会の論文集に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、神秘主義作品と、それに関係する作品の談話ストラテジーの研究を総合的に進める予定であったが、、接続副詞 nu (now) に関する調査研究だけしか調査を終えることができなかった。接続副詞の研究を進めるうちに、神秘主義作品とその関連作品の語彙的な特徴を先に調べる必要があることに気付き、調査対象作品の電子テクストをコンコーダンスソフトにかけて検索する調査を加えて行うこととなった。この語彙に関する調査研究の成果は、‘How is a Text Classified in Mystical Writing? Typical Vocabulary and Expressions in Middle English Mystical Writing’の題目で、9月に慶応義塾大学で行われた The 4th International Conference of the Society of Historial English Language and Linguistics で発表することができたものの、この検索の準備として、調査対象とする作品の電子テクストを形成する必要があり、公開されている電子テクストが手に入らない作品に関しては、自分でテクストを電子化する作業が必要となった。その作業に多大な時間が必要となったため、予定していた他の談話ストラテジーの調査を終えることができなかったのである。 また、これまでに投稿していた論文の校正が次々と入り、それらの論文の完成度を高めるために、細かい点を再調査したり、査読者から指摘を受けた点を確認したりする時間が必要となった。 その結果、談話ストラテジーに関する研究を遂行する時間が非常に短くなってしまい、今年度は計画通りに研究を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度中には、中世神秘主義作品と、それに関連する作品の談話ストラテジーについて総合的に考察できるまでには、読者に対する説得的態度を表す文体的特徴に関する調査を進めることができなかったので、平成25年度も継続して読者を説得するための談話ストラテジーに関して研究を進める予定である。 昨年度末に予定していた通り、今後も、 Halmari (2005) が現代の政治的スピーチを分析した結果、演説家が聞き手を説得するために用いていると指摘するストラテジー十項目を中心に、中世神秘主義作品と、それらに関連する宗教散文作品について調査を進める。 各ストラテジーが、どれくらいの頻度で各作品に現れるかを調査し、各ストラテジーが頻出する作品の傾向や、各作品において、どのような方法でそれらのストラテジーが遂行されているか、また、それらのストラテジーを実際に遂行する各文法的要素がテクスト中で果たしている機能などを分析することによって、作品間の類似性と相違を明らかにしたいと考えている。
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