研究実績の概要 |
本年度は、まず実施計画の通り、英国スウォンジー大学の Gregynog Hall (Newtown, Powys, Wales) に於いて開催された The 5th International Anchoritic Society Conference で ‘Julian of Norwich and Medieval Rhetorical Arts of Preaching’ の題目で4月23日に研究発表を行った。Robert of Basevorn が、その著作 Forma Praedicandi(『説教の形式』)で、アウグスティヌスらの旧説教形式には見られず、13世紀以降の新説教形式で体系立って見られると述べている説得の技法を、ノリッジのジュリアンが彼女の著作 Revelations of Divine Love でどの程度用いているかを明らかにし、ジュリアンがそれらを意図的に用いたかどうかについて考察を加えた。 また、拙論 ‘The Mapping of Rhetorical Strategies Related to Persuasion in Middle English Religious Prose’ が Michael Bilynsky (ed.) (2014) Studies in Middle English: Words, Forms, Senses and Texts. Frankfurt am Main: Peter Lang. の pp. 343-360 に掲載されて出版された。 また、米国アリゾナ州のフェニックスで開催された Twenty-First Annual ACMRS Conference に於いても、‘“As holy church techyth”: Women Mystical Writers' Persuasive Devices which Demonstrate their Orthodoxy’ の題目で2月6日に研究発表を行った。ノリッジのジュリアンの著作には、教会への言及や、彼女の啓示の解釈が教会の教えに矛盾しないことを示す表現が同時代の他の宗教散文と比較しても多用されていることを示して、これらが自分の著作の正当性を主張しようとする著者の意図の現れであることを明らかにした。
|