研究課題/領域番号 |
22520283
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
三宅 敦子 西南学院大学, 文学部, 准教授 (10368970)
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キーワード | 英米文学 / 19世紀 / 文化史 |
研究概要 |
本年度は研究開始二年目であったので、当初の計画通りA.トロロープの小説全集を継続購入し、主としてその分析にあたった。全集をざっと見たところ、トロロープの作品については、既によく知られているシリーズ物(バーチェスター年代記およびパリサー小説群)のほかにも単体の小説が複数あり、その中にも当時の社会風習を見る上で有益なものがあることが分かった。またトロロープは、同時代の大衆に大いに受けた作家ディケンズのように、インテリア表象を登場人物の肉付けのための比喩表現として用いるというやり方ではなく、むしろ居住空間に関する当時の習慣を記録に残すような形で、小説に描写している傾向があるのではないかということが、何冊かの小説の分析から推察された。いいかえると、具体的な部屋の設えそのものではなく、むしろ特定の部屋でどのような行為が行われるのか(例えば登場人物の家に朝食室がある場合、朝食は常にそこで取るように描かれている)ということについての描写が細かいということである。これについては、以下の研究成果欄に記載した雑誌論文「習慣の記録者としてのAnthonyTrollope-The Small House at Allingtonにおける居住空間の描写の分析-」にまとめた。空間描写そのものではなく習慣を描写しているということは、私の当初の予想外であったため、居住空間に関係する習慣について新たなリサーチが必要になった。具体的には、どの部屋でどのような行為を行うべきか、ということに関する当時の習慣についての文献を探すことである。まずは当時の礼儀作法についてのガイドブックなどにあたったが、結果として居住空間に関する当時の習慣を知るために最適な文献は、建築関係の指南書であることが判明した。それらについてはこれまでに十分なリサーチを行っていなかったため、平成24年1月にイギリス、ロンドンにある大英図書館に出向き蔵書を検索し、関係する書籍を読んだ。また図書館内でのみ利用可能な複数のデーターベースを利用して、居住空間に関する習慣についての記述を探した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年3月11日に発生した東日本大震災のために、年度初めに本年度の支給額が確定しなかったこともあり、本研究の執行に慎重な対応が求められた。そのため書籍の発注がいくぶん遅くなり、書籍が手元に届くまでの時間が予想以上にかかってしまった。また本年度の学務が当初の予想以上に膨れ上がり、研究のために当初の計画通りに時間を割くことができなくなったため。そのため資料の分析まではできても、当初予定していた分析した引用のデーターベース化が思ったほど進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果として、トロロープとこれまで同じテーマで研究してきた作家との違いが明確になったこと、またトロロープの作品と照らし合わせながら読むべき一次資料が建築関係のものであることなどが判明したので、来年度の研究については、本年度よりは比較的スムーズに行くのではないかと考える。来年度は本年度以上に研究の時間がとれるよう、努力したい。
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