アナーヤ、バカ、カスティーヨ、アンサルデューアなどのチカーノ/チカーナ作家に関する第一次資料と先行研究を検証したほか、エスニック、ポストコロニアル、ジェンダー、グローバル研究などの理論研究及び文化研究を進めた。平成22年8月9日のエコクリティシズム研究会では「エスニック・エコクリティシズムの可能性に向けて」というワークショップにおいて現代カリブ海文学女性作家マリーズ・コンデ、シャニ・ムトゥー、ギゼル・ピノーについて、ジェンダー、ディアスポラ、ポストコロニアルの視点から発表を行なった。 また、平成23年音羽書房鶴見書店より出版予定の『環境と文学 オルタナティヴ・ヴォイスを聴く-エスニシティとジェンダーで読む現代英語文学の名作73選』の編集委員として、アナーヤ、アンサルデューア、パストラル概念などについて論じた他、人間と動物との関係を扱った作品を論じた「いきものを語る」の章と、エスニシティの都市生活を扱った作品を論じた「都市環境と越境」の章の編集担当者として10名の執筆者の原稿の編集を行ない、解説記事も執筆した。 平成23年3月中旬には、ニューメキシコ州立大学図書館において先住アメリカ人、メキシコ系住民、南西部へのアングロの流入、鉄道敷設、米墨関係に関する文献を幅広く検証し、アルバカーキ、サンタ・フェの歴史博物館と民族博物館で南西部の歴史・文化遺産に関する資料を収集し、フィールドワークを行なった。 こうした研究調査により、チカーノ文学を単にアメリカの中ではなく、アメリカスという歴史的文脈の中で捉えることができ、またカリブ海に祖先をもつ作家を研究することで、23年度に行なうカリブ海作家の研究の足がかりを得ることができた。
|