ドイツ・ナショナリズムの興隆を背景に、ドイツやオーストリア、スイスの国境外に居住する「在外ドイツ人」の存在は、血統主義的に考えられた「民族ドイツ人(Volksdeutsche)」の「文化的前哨」という政治的機能を負った。そのため、「在外ドイツ人研究」は広範な分野で制度化されたにもかかわらず、第二次世界大戦後は一転して禁忌化され、研究成果は当該マイノリティ内部を除いて歴史の闇に葬られた。 本研究では、ゲルマニスティーク(ドイツ語ドイツ文学研究)を中心に「在外ドイツ人研究」の資料を再発掘し、その学術的意義を検証した。また、上記の政治的機能の影響を当該マイノリティが置かれていた政治的、社会的文脈をも踏まえて再検証した。
|