研究課題
最終年度には、これまでの成果を具体化することができた。申請者はアントウェルペンのプランタン=モレトゥス印刷博物館およびその所蔵文書を、主たる研究対象としたわけだが、プランタンが出版した、フートハルス著『フランドル語・フランス語対照ことわざ辞典』(1568)において、いくつかのことわざの典拠としてラブレーと明記されていることを新たに発見し、このことを、拙訳『第五の書』の解説でも論じた。『第五の書』自体が、新作ではなく、ラブレーをめぐる「パラテクスト」と解釈できるからである。そして本邦初公開の『パンタグリュエルの滑稽な夢』(1565)なども付録として、邦訳『第五の書』を上梓することで、フランドルの画家ブリューゲルとのある種の「間テクスト性」をも明るみにだすことができた。そして、これまでの数次にわたる「科研」の実践態として2005年より精力を注いできたラブレー《ガルガンチュアとパンタグリュエル》全5巻(筑摩書房)の日本語訳を完成することができたわけで、これはヨーロッパの古典をわが国において継承していく上で、大きな成果であると誇っていいと信じている。事実、このラブレーの翻訳・註解に対して、読売新聞社より、第64回「読売文学賞、研究・翻訳部門」を受賞する栄誉にも浴したのである。以上の研究のほかにも、プランタン=モレトゥスが所蔵する1595年版『エセー』(グルネー嬢手沢本)を参照した、『エセー』の新訳も順調に進行し、2013年2月に『エセー5』を刊行することができた。残るのは、プランタンの『家事日記』や『書簡集』から得た知見を盛り込んで、彼の生涯とその知のネットワークを描き出すことだと、気力を新たにしている。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Bulletin de la section française, Faculté des Lettres(Université Rikkyo)
巻: 42 ページ: pp.23-45
村松真理子編『旅 テクストへ/テクストから』(UTCPブックレット)
巻: 22 ページ: pp.37-53