イタリアの20世紀初頭に活躍したガブリエレ・ダヌンツィオは世界の文学史上、文学と大衆的読者との関係においても、20世紀詩の新しい詩的言語の創造に先鞭をつけた詩人としても重要である。その生涯と作品世界を、今までの作家研究において分離して考えられがちだった作品の文学的な「価値」(あるいは詩的言語)を、政治的社会的な作家の主張や大衆・読者との関係の中で検証しなおすという「研究の目的」のため、平成22年度はイタリアでの調査を中心に行い、いかに同時代的にこの作家が、国際的に受容されていたかに焦点をあてた研究を進めた。 1)合計3回のイタリア出張(うち2回が当科研による出張)を行い、イタリアの図書館(主に「ヴィットリアーレ」図書館とボローニャ大学図書館)での調査や研究者訪問と意見交換(「ヴィットリアーレ」グエッッリ現館長、アンドレオーリ前館長、ボローニャ大学ロレンツィーニ教授等)を行い、ダンヌンツィオの直筆原稿や書簡、ダンヌンツィオ宛書簡等の未刊行資料を発見し、その分析について研究を進めることができた。 2)東京大学、日本近代文芸館の図書室等で調査し、日本でのこの作家の受容と影響について研究の基礎を固める事ができた。 以上の調査をまとめ、現在すでに日本およびフランスでのダンヌンィオの受容をテーマとする論文を1本刊行した(2011年3月)。さらに「ヴィットリアーレ」の日本関連資料を紹介分析する論文が2011年7月刊行される予定である。また、その成果から、2011年7月にイタリアの国際シンポジムで発表する予定である(招待講演)。
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