研究課題/領域番号 |
22520297
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村松 真理子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (80262062)
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キーワード | その他のヨーロッパの各国文学 / イタリア文学 |
研究概要 |
20世紀初頭に国際的に人気を博したイタリアの詩人・小説家のガブリエレ・ダヌンツィオは、世界の文学史上、文学テクストと大衆的読者との関係においても、20世紀詩の新しい言語表現の創造においても、先駆的な存在である。その生涯の軌跡とテクストの総体を有機的につなげながら「作品」として読み取り、政治的社会的な作家の主張や大衆・読者との関係の中で検証しなおすという「研究の目的」のため、平成23年度は特にその日本の読者との関係に焦点をしぼり、イタリアでの前年度の調査結果をもとに、成果を論文としてまとめた。また日本文学への影響というテーマの中で、特に三島由紀夫のダヌンツィオの受容に関して研究を行い、成果をイタリアで発表し、さらに著書にまとめた。今後は、その成果を展覧会の形でまとめる準備にとりくみたい。 1)第1回目の出張は、ダヌンツィオゆかりの地でもあるフランカヴィッラ市でのイタリア哲学協会主催シンポジウムでの招待発表を行い、同時にダヌンツィオの創作の場であり、初期の作品の重要な舞台でもあった場所、歴史的建造物を調査した。その発表原稿は加筆訂正し、前年度に研究を進めたフランスでのダヌンツィオ受容についての論文とともに、イタリア語の論文集としてまとめた。 2)第2回目の出張は、数度にわたり調査を行っているヴィットリアーレ博物館図書館での調査と打ち合わせだった。来年は詩人の生誕150周年であり、ヴィットリアーレ財団が中心となって記念事業が大々的に行われる予定である。その学術準備委員会に参加を求められており、また記念事業の一環として財団と協力して東京大学駒場博物館で展覧会を行う計画を準備中で、財団長、美術館学芸員、広報プレス担当責任者と、打ち合わせの会議を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に予想以上に興味深い資料をイタリアで発見でき、研究成果をすでに資料紹介を中心に前年度の予定通り、2年間で2本の論文にまとめることができ、イタリア語での発表著作に実らせることもできた。さらに150周年という節目にあたり、展覧会を開催することは、書いたテクストのみでない表現を意識的に行ったダヌンツィオについての当研究を、印刷媒体に限られない形でより総合的に成果としてまとめ、大学や研究者の枠を超えた広い人びとに発表できる有効な機会としたいので、そのための計画をつめているところである。
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今後の研究の推進方策 |
日本での受容について、さらに日本側資料(新聞資料、日本の作家のダヌンツィオの翻訳、批評、影響をうけたテクスト等)を調査し、論文としてまとめたい。また上述したように、イタリアで大々的に展開する記念行事に研究者として関わることで、さらに研究に関する情報や新しい動向にふれ、自分の研究に生かし、日本、アジアからの視点で国際的なダヌンツィオ研究、イタリア20世紀文学研究に寄与したい。さらに、駒場博物館での展覧会において、今までの研究成果の発表と新たな研究動向の紹介、今後の世界的な文化の大衆的受け取り手に対する視点を、21世紀の国際的なダヌンツィオ研究としていかに提示するか、準備を進めたい。
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