20世紀初頭に活躍したガブリエレ・ダヌンツィオは世界の文学史上、文学と大衆的読者との関係と、新しい詩的言語の創造に先鞭をつけた詩人であり、その生涯と作品世界を、今までの作家研究において分離して考えられがちな作品の文学的「価値」(あるいは詩的言語)と政治的社会的な作家の主張や大衆・読者との関係の中で検証しなおすというのが研究目的である。最終年度の24年度は日本イタリアで補完的調査を行い、いかに同時代的にこの作家が国際的に受容されていたかに焦点をあて、国際シンポジウムで成果を発表した。 1) イタリアの図書館やゆかりの地(「ヴィットリアーレ」、ボローニャ大学図書館、フィレンツェ)、関連のモニュメントでの調査と、イタリアの専門家・研究者の訪問と意見交換(「ヴィットリアーレ」グエッリ館長、ボローニャ大学ロレンツィーニ教授等)を引き続き行い、ダンヌンツィオの直筆原稿や書簡、ダンヌンツィオ宛書簡等の未刊行資料を再調査し、分析を進めた。年度末には協力者とともに、研究成果発表として25年度開催予定の展覧会展示品を検討し、イタリアで「ヴィットリアーレ」図書館・美術館の担当者と打ち合わせした。 2)国内では、翻訳作品とその日本文学への影響、翻訳・紹介者である有島生馬、生田長江について、日本近代文学館、鳥取県立米子図書館、日野町図書館、神奈川近代文学館、東京大学情報学環の新聞資料室等で調査し、新聞記事、写真、手稿等を確認し、研究者との交流を行うことができた。 3)過去2年間の調査研究とあわせ、今年度の以上の成果をまとめ、特に「ヴィットリアーレ」の日本関連資料とダンヌンツィオの日本文学への影響に関し、年度末にイタリア、ペスカーラ市でのダンヌンツィオ生誕150周年国際シンポジウムで発表し(招待講演)、イタリアの専門家との研究交流や意見交換を行った。現在その成果を刊行すべく展覧会と単著を準備中である。
|