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2012 年度 実績報告書

ギリシャ悲劇の歌の、韻律にもとづく類型学

研究課題

研究課題/領域番号 22520298
研究機関東京大学

研究代表者

逸身 喜一郎  東京大学, 人文社会系研究科, 名誉教授 (40107420)

研究期間 (年度) 2010-04-01 – 2014-03-31
キーワード西洋古典 / ギリシャ悲劇 / 韻律
研究概要

本研究の最終目的は、ギリシャ悲劇の歌の部分(コロスが歌うスタシモン、俳優の歌うコンモスといわれる部分、ときにアモイバイオンと呼ばれる両者のかけあいなどを含むすべて)を三大悲劇詩人の全作品から収集し、それらの韻律を個別に分析して叙述したのち、歌全体を韻律を基準にして分類することを試みることである。つまり韻律をもとにした、悲劇の歌の類型学(タイポロジー)である。その最大の特徴は、歌を構成する個々の行の韻律分析にとどまらず、歌を全体として把握して、どの歌とどの歌とが似通っており違いがあるとすればいかに違うのかを叙述することにある。
研究方法は、おおむね次の順序で進行している。1 歌の収集。歌い手による分類 2 それぞれの歌の行毎の韻律分析。そして当初の計画ではこのあと 3 同一韻律の行の収集。傾向の把握 4 歌毎の特色を示す基準の摘出 5 歌の類型の把握 と続ける予定であった。
1については完了、2については難解部分を残して完了しているものの、3の傾向の把握は予想よりもはるかにてごわい。さらに俳優とコロスがかけあう歌の部分(アモイバイオンと総称されることもあるが、このまとめ方それ自体に問題が多い)は、歌い手がコロスであるか否かによって、傾向に差を生じせしめることがあらたに問題点として浮上してきている。すなわち分類の基準が多元化することになる。およそ類型学につきものの問題であるが、多様な対象を煩瑣にならないように簡素化することにいまだとまどっている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

前年度ならびに前々年度からもちこした、dochmiacs と iambics ならびに dactylics の anceps にみられる、いまだじゅうぶんに説明されつくされていない長短の傾向の分析、ないし法則の摘出に決着がつけられていない。これは本研究の趣旨からみれば回り道であるけれども、ここの対象の細部が不確かであるとあとで混乱を引き起こすことも考えられるので、このことを見通しをたてたのちに本研究の大筋に戻りたい。
さらに従来、スタシモンとかコンモスというアリストテレス由来の名前が、明瞭な定義なくして慣用的に用いられているが、これについても再吟味が必要であることを痛感している。そこでこれらにもある程度まで明確な枠組みを提案することを考えている。対象をいくつかの類型に分類することの準備は、それぞれの類型の定義を明確にすることにつきる。スタシモンその他の分類もまた、韻律・歌い手とならぶ基準に取り入れなければならない。

今後の研究の推進方策

当初の計画に戻って、悲劇の歌すべての分類方法を確立する手段を探すべきと考えている。当初計画では韻律を最大の分類基準とすることで、結果として韻律による分類であった。しかし劇構造ないし劇の構成区分としての歌の種類の分類を抜きにしては、分類が叙述できないことが明確となってきている。さらにまた劇の構成区分について、伝統的にしかるべき用語に欠陥があることも問題点であることが判明している(詳細については「達成度」の項目に記述した)。本研究としては最低限、客観的な分類基準を明確化するところまではこぎつけなくてはならない。
この問題意識はおそらく世界中の研究者で共有されていると見受けられる。しかし誰もが手を出していない状況をどのように突破するか。可能な限り今年度もヨーロッパ諸国の研究者との意見の交換につとめる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013

すべて 図書 (2件)

  • [図書] ギリシャ神話は名画でわかる2013

    • 著者名/発表者名
      逸身喜一郎
    • 総ページ数
      253
    • 出版者
      NHK出版
  • [図書] 『バッカイ』(翻訳・解説付き)2013

    • 著者名/発表者名
      逸身喜一郎
    • 総ページ数
      231
    • 出版者
      岩波書店

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公開日: 2014-07-24  

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