研究最終年に当たっていた平成24年度は、これまでに主にフランスにおいて調査・収集した文献及び諸資料の精査と分析を行い、研究成果を以下の研究会及びシンポジウム等で発表した。 1)第19回シャンソン研究会(於関西学院大学大阪梅田キャンパス、2012年5月12日開催)、「パリ・コミューンとシャンソン」等。 2)第31回広島大学フランス文学研究会(於広島大学、2012年8月4日開催)、特別招待講演「ベル・エポックとシャンソン」(吉田正明本研究代表者)。 3)第20回シャンソン研究会特別企画シンポジウム「20世紀のシャンソンを回顧して」(於信州大学、2012年11月10日・11日開催)、研究発表「シャンソン・レアリストと<ならず者>神話の変遷」(青木夏子、パリ第一大学博士課程修了)、「ベルエポックとシャンソン」(吉田正明本研究代表者)等。 今回の調査研究を通じて、日本では入手困難な多くの一次資料や文献及びCDやDVDなどの音源や映像資料を入手することができ、それらの資料に基づいて19世紀中葉から20世紀初頭にかけてパリの文芸キャバレーやカフェ・コンセールにおいて隆盛したシャンソニエ(シャンソン作家)の実態を探り、彼らが作った社会風刺的、政治的、文学的シャンソンの実相をある程度明らかにすることができた。これまで日本においてはほとんど知られていなかったテレザ、ポーリュス、ポラン、メイヨール、ドラネム、フラグソンといった19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したカフェ・コンセールのスターアーティストたちの実態も明らかとなった。 本研究を通じて、19世紀末以降のシャンソンの大衆化と普及と同時に、シャンソンと文学との緊密や影響関係が、テレザ、ドラネム、ブリュアン、ギルベール等のシャンソン歌手と文学者との交流を通してある程度解明できたことが大きな成果であった。
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