本研究の第一年目には、1790年から1800年までの期間における、断片とパノラマの成立の歴史的経緯を調査、検討した。第二年目である平成23年度においては、19世紀初頭における、パノラマ成立の経緯の考察が検討された。そのために、この時代の文芸評論誌等の数多くの雑誌を調査し、パノラマについてのなんらかの記述がないかについて調べた。ドイツでの資料収集においては、パノラマが重要な意味を持つような文学作品および同時代の資料を収集した。そのうえで、集めたテキストについて、パノラマという観念および見方がいかに視覚的慣習を変化させ、語りのパースペクティヴにいかなる影響を与えたのか、という点について検討した。扱ったのは、ゲーテ、アルニム、ブレンターノ、アイヒェンドルフ、グツコー、クライスト、およびアメリカ文学のエドガー・アラン・ボーなどのテキストである。こうした検討によって得られた結果を、さらにこれまでの主観化/主体化の技術の考察との関連でさらに検討した。
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