研究課題
本研究は、1790-1800年に起きた断片(フラグメント)とパノラマの歴史的成立に対して、それらのもつ主観化技術としての機能に着目しながら考察を加えるものであった。研究期間の3年目となる本年度には、当初計画どおりに、19世紀と20世紀の文学テキストを手がかりにして、パノラマがどこまで「見ること」の慣習性を変えたか、そしてパノラマが小説の物語パースペクティヴにいかなる影響を及ぼしたかが研究された。その上で、この研究の成果を、主観化技術についてのこれまでの考察に関連づけた。それによって美的な知覚プロセスに対するまったく新しい見方が可能になった。まさに美学と主観化技術をこのように関係づけた点にこそ、本研究の斬新さと独自性が認められる。断片とパノラマは、言語と可視性が交差する場であり、それらを手がかりにすることで、知の形式と主観化技術の関係を記述することが可能になるからである。これまでの先行研究で、この関係が考察対象とされたことはなかった。2012年度の後半には、収集された資料の詳細な検討をすませ、予定したとおりに、成果発表の準備に取りかかることができた。すでに2本の論文が完成している。一つ目の論文「驚嘆と享楽のあいだ――ゲーテとロマン派にみるパノラマ」はすでに査読もすんで印刷に入っており、7月刊行のドイツの学術誌『Weimarer Beitraege』に掲載される。二つ目の論文「断片性の要求と作品の不在。ロマン派の断片について語るブランショ」は、論集『文学の災厄―――ブランショにおける否定性と断片性』に掲載されることが決まっている。さらに、断片とパノラマについての考察をまとめた単発の論文をもうひとつ発表する予定である。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
Weimarer Beitraege
巻: 59/3 ページ: 印刷中
Das Desaster der Literatur. Einsamkeit, Negativitaet und Terror bei Maurice Blanchot
巻: 00 ページ: 印刷中