平成22年6月3日~5日にパリ・ディドロ大学およびバルザック館で開催された国際バルザック研究会主催の国際学会「バルザックと他の作家たち/交差する生成研究、出版の歴史」において、「プルーストとバルザック:両作家の創作法」という主題で口頭発表を行った。事後的に作品に統一性を付与するというバルザックおよびその他の19世紀の芸術家の創作法に関心を持つプルーストは、バルザックによる校正刷りへの加筆訂正を意識しつつ、草稿帳およびタイプ原稿という特殊な紙媒体の使用により自らの作品を客観視・相対化しつつ改変していったことを論証した。同学会に参加していたバルザック、フローベール、スタンダール等の専門家と意見交換を行い、貴重な示唆をいただいた。同年10月17日の日本フランス語フランス文学会秋季大会(南山大学)のワークショップ「印刷物の生成論」においても、「「印刷物の生成論」の先駆者プルースト」という標題のもとに、プルーストとバルザックの創作法の関係についての論を観点を変えつつ研究発表を行った(学会ニュースに要旨掲載)。 平成22年11月20日~21日関西日仏学会で行われた国際学会「19世紀の文化遺産とプルースト:継承と断絶」において、「プルーストとフローベール批評」という主題で研究発表を行った(刊行予定)。これは平成23年度の研究予定であったが、学会開催に合わせて研究を進め、19世紀後半の様々な批評言説と関連付けながら、プルーストのフローベール論の特徴を批評史・受容史の中に位置づけるとともに、その独自性を相対化することを試みた。他方、草稿に現れる同時代作家として特に19世紀後半に活躍した批評家を抽出し、草稿を解読するとともにデータ化を行なった。
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