当初の計画どおり、最終年度(3年計画のうち)の研究作業は「新フランス評論」誌創刊前後の雑誌間文学交流にかんする基礎資料の分析と、作業成果の統合が中心となった。まずは、本課題が対象とする時期(一応の区切りとして1904年から第一次世界大戦勃発までの10年間)に刊行され、かつアンドレ・ジッドら「新フランス評論」グループと何らかの関わりがあったフランス内外の象徴主義文芸誌のうち、主に「誌と散文」誌および「ラ・ファランジュ」誌の総体的分析によって両誌の編集方針や文学的主張の傾向を探った。また我が国では入手困難な関連雑誌類の参照と、未刊行の文献や資料(特にジッドと同時代作家・文学者たちとが交わした書簡)の閲覧・筆写を目的としてフランス(パリ大学附属ジャック・ドゥーセ文庫、フランス国立図書館など)で現地調査をおこなった。訪問機関の内、とりわけドゥーセ文庫の場合は閲覧規則がきわめて厳格であり、書簡にかんしては差出人またはその遺産相続人による許可が必要とされるが、あらかじめ十分な探索・交渉によってこれを取得していたので、現地での無用な時間的ロスもなく、効率的に作業を進めることができた。以上の調査・分析にもとづく主要な研究成果としては、第一に、ジッドと「誌と散文」誌主宰者ポール・フォールとの往復書簡集を編纂・校訂し、フランスのジッド研究センターから公刊したこと、第二に、クロード・マルタン国際ジッド学会名誉会長と共同で「ラ・ファランジュ」誌の総合的な書誌・索引を完成したことである。
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