研究課題/領域番号 |
22520322
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
赤塚 若樹 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (80404953)
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キーワード | 映像文化 / 中欧 / 視覚文化 / 表象文化論 / 東欧 / 美術史 / 文化史 / 比較文学 |
研究概要 |
本年度も継続して資料収集に力を注ぎ、本研究の直接の研究対象となるチェコの視覚芸術にかんする書籍やDVDの収集につとめた。これら資料を利用し、とりわけ理論的考察を進めるさい、きわめて有益な知見をもたらしてくれる最新の映像論・イメージ論にかんする書籍もあわせて入手した。チェコの芸術家・映像作家のヤン・シュヴァンクマイエルとその妻で画家のエヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーの展覧会が2011年夏に開催されるのにあわせて制作された図録に文章を寄せ、そのなかで両者の大ざっぱに「絵」として括られる作品群をおもに考察しながら、ヤンの視覚的想像力が、作家によるモノとの無媒介の接触、ならびに偶然性を取り込む手法とともにあり、それらによって特徴づけられてもいることをしめした。またヤン・シュヴァンクマイエルの新作映画『サヴァイヴィング・ライフ』の上映のあわせてつくられた書籍には、過去に作成した年譜の改訂版を寄せた。アメリカの映像作家ハリー・スミスの初期映像作品の背景についても調査し、論文として発表した。チェコの視覚芸術に属するものではないが、そこで行なった、実験的映像が制作される環境とその状況にかんする考察はチェコの文脈を理解するのにも大いに役立っている。また、中央ヨーロッパを特集する雑誌に寄せた論文では、チェコスロヴァキアの「正常化」時代に音楽家ユニオン・ジャズ部門がくりひろげた、芸術全般にかかわる活動を検討することによって、当時芸術がおかれていた状況の一端をあきらかにした。ここ数年来取り組んできた、チェコ・アニメーションをあつかう書籍の編集・翻訳の作業がひとつの段階を越えることができた。順調にいけば平成24年度中には刊行できるものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料収集がはかどるとともに、個別の事例について興味深い材料を集めることができ、周辺領域の諸テーマについても研究することができた。震災の影響とそれにともなう混乱はあったが、全体としてみればおおむね予定どおりに研究が進められたと思う。
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今後の研究の推進方策 |
これまでが準備期間であったというつもりはないが、それでも資料収集などに力点が置かれる部分がなくもなかった。今後は個別の事例について分析や解釈、検証や考察に時間をかけ、本研究課題にかんする一定の成果をあげるように努めていきたい。
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