平成23年度に実施する予定だったのは、(1)フェルナンド・デ・プルガールの『書簡集』および『カトリック両王年代記』の相互テクスト性を時系列的分析を行い、(2)その結果をデータベース化すること、ならびに、(3)両作品の写本と刊本の調査であった。 これらの成果については、以下の通りである。 (1)『書簡集』で書簡の受取人になっている人物が『カトリック両王年代記』において演説の発話者となっていることに特に着目した。『書簡集』に関しては、書簡受取人および書簡作成時期に関する一覧を作成した。『カトリック両王年代記』に関しても、演説の発話者に関して同様のこと(人物および発話時期一覧作成)を行う予定であったが、これは途中までしか進めることができなかった。計画では、さらに、書簡の内容と演説の内容の一致/不一致を調べ、書簡と演説の相互テクスト性の程度を分析する予定だったが、これに関しても、『カトリック両王年代記』の演説発話者一覧化の遅れが理由となって、途中までしか進めることができなかった。 (2)よって、(1)をデータベース化する作業には着手できなかった。 (3)両作品の写本および刊本に関する調査は、平成22年度の成果もふまえて23年度も予定通り進めた。 上と並行して行ったのは、古代から中世にかけてのラテン語による文学理論(特に、文法、修辞学、試論)の受容と発展、および、カスティーリャ文学における俗語文学の発展とその理論化に関する研究である。本研究が、初期ルネサンス期のスペインにおける俗語文学の台頭という文脈の中でのプルガールの位置づけという文学史的アプローチも含んでいることから、研究計画の半ばにあたる平成23年度において、中世におけるラテン文学および俗語文学の歴史に関する部分を研究しておくことが必要だと判断した。
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