今年度は、立教大学におけるシンポジウム「同時性・翻訳・変容」において、「Simultaneitat der Kulturen im Prozess der Bildung der Weltgesellschaft(世界社会形成の過程における諸文化の同時性)」という口頭発表を行った。1800年前後のドイツ語圏と日本において、書籍市場が同様に拡大、それが類似した文学傾向をもたらした現象を分析した。メディア史論、画像論を比較文学、比較文化に応用したものである。 本科研は、基盤研究(B)「ヒューマン・プロジェクト:人間学の文化史的視点からの再構築」(研究課題番号22320065)と補完しあう面があるが、後者の科研の一環としてのシンポジウム"Die Frag-Wurdigkeit des Menschen"でも「"Human Project"in der japanischen Moderne(近代日本における「ヒューマン・プロジェクト」)」との口頭発表を行い、双方の科研にとっての成果を披露した。ヨーロッパの人間概念、また、文化学の基礎である文化概念の日本への移入を、森鴎外のコッタ社宛ドイツ語書簡、西田幾多郎のエルンスト・ホフマン宛ドイツ語書簡、アルトゥア・シュニッツラーの山本有三宛書簡(1926年)など、いずれも未紹介ではないかとも思われる資料を材料に論じた。 1900年前後にドイツ語で書いた戯曲をドイツで刊行した、作家にして学者、北里闌が、自然主義の作家コンラート(Michael Georg Conrad)に出した書簡やはがきも見出したが、これも未紹介かもしれない。分析中である。
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