研究課題/領域番号 |
22520327
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
縄田 雄二 中央大学, 文学部, 教授 (20251382)
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キーワード | 文化学 / 文化概念 / 日独交流 / 事物詩 / キットラー |
研究概要 |
『文学』(岩波書店)に載った「マールバッハとハイデルベルクに見出された日独交流資料-森鴎外・西田幾多郎・山本有三」は、昨年度の口頭発表を印刷公表したものである。ここでは文化学(Kulturwissenschaft)の前提となる、文化(Kultur)概念を、鴎外や西田がいかに受容したかを分析、またシュニッツラーと有三の文学を、文化学の観点(メディア史論や学問史論)から比較した。この論文の副産物が「田辺元のカール・ヤスパース宛電報」(岩波書店『思想』に発表)、「西田幾多郎のエルンスト・ホフマン宛ドイツ語書簡」(西田幾多郎記念哲学館『点から線へ』に発表)である。以上の論で取り上げた鴎外、シュニッツラー、西田、田辺らの手紙や電報は、これまで未紹介であった可能性が高い。貴重な日独交流資料を紹介し論じた意義は小さくないと考える。 "Simultaneitat der Kulturen im Prozess der Bildung der Weltgesellschaft"(昨年度の口頭発表を論文にしたもの)と"Von der Traumgestalt zum Ding. Eduard Morikes Literatur im Zeitalter der Photographie"(今年度行った講演)は、あわせて事物詩(Dinggedicht)の日独比較論となる、一対の論である(用いた文化学理論はメディア史論と映像論である)。前者は印刷中であり、後者を印刷公表する作業も進捗した。事物詩研究を、狭い文学研究の枠から解き放ち、文化学と文化比較という広い枠に置き直しつつ、大きく進展させられたと信ずる。 『思想』に掲載された「フリードリヒ・キットラーを悼む」では、フリードリヒ・キットラーに代表されるドイツの文化学と、和辻哲郎に代表される日本の文化学を比較、私の研究をその中に位置づけることを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マールバッハ・ドイツ文学資料館、ハイデルベルク大学図書館での資料調査が功を奏するという、昨年度の予期していなかった成果により、今年度の研究が大きく進展した。一方で、本年度行うはずであった日独記憶文化の比較研究は、来年度に回さざるを得なくなった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度行うはずであった日独記憶文化の比較研究を推進したい。 本研究のこれまでの進展で、近代以前の東アジアの漢詩がヨーロッパともつながっていた文学であり、比較文化研究の好適な材料であることがよく分かった。引き続き調査したい。 マールバッハ・ドイツ文学資料館、ハイデルベルク大学図書館の調査で見つけられた資料で、まだ分析していない資料の分析も進めたい。
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