研究課題
平成24年度以前からの研究の成果であるが、ドイツ語で著書『比較メディア史--18世紀末から20世紀末にかけてのドイツ文学・日本文学を例に』を上梓した。ドイツ語圏の人文科学を近年刷新した「文化学」(Kulturwissenschaft)の一手法、「メディア史」(Mediengeschichte)を、日独比較文学・比較文化に応用したものである。メーリケの詠物詩(Dinggedichte)が、メーリケと写真との出会いから生まれたとの説を、格の高さを誇る学術誌"Weimarer Beitraege"においてドイツ語で提唱した。詠物詩は東アジアの漢詩の伝統でもある。李氏朝鮮のYi Ik(文字化けを避けてアルファベットで表記)、丁若鏞、金笠が、眼鏡という、ヨーロッパが生んだ一種の光学器械を詠んだ詠物詩を分析、ソウルのGoethe-Institut Koreaでドイツ語で口頭発表し、印刷にも付した。同時代の日本において、顕微鏡や望遠鏡を詠じた詠物詩を分析した論文もドイツ語で近々刊行される。以上三つの論考は、メディア史、図像論、学問史といった文化学の手法を応用したものであり、三つ併せて、詠物詩と光学器械との関係を、地球規模の文化史の脈絡において比べた比較文化論となった。①ヨーロッパの文化史のみを対象としがちなドイツ語圏の文化学の諸手法を、地球規模の比較文化論に開いた。②東アジアの文学、文化の研究に、今まで無かったような清新な視点を、ドイツ語圏の人文科学の最前線で開拓されつつある理論によってもたらした。③歴史学が近年発展させた「グローバル・ヒストリー」に、文化史研究によって独自の貢献をした。以上、文化学、比較文学、比較文化、東アジア文学研究、グローバル・ヒストリーそれぞれに新たな局面を切り開く、重要な成果を挙げ得たと信ずる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of the Faculty of Letters, Chuo University (Tokyo, Japan)
巻: 245 ページ: 27-42
Keiko Hamazaki/ Christine Ivanovic (Hg.): Simultaneitaet - Uebersetzen. Tuebingen: Stauffenburg
巻: (単行本) ページ: 169-185
Ruediger Zymner/ Achim Hoelter (Hg.): Handbuch Komparatistik. Theorien, Arbeitsfelder, Wissenspraxis. Stuttgart/ Weimar: Metzler
巻: (事典) ページ: 75-80
Weimarer Beitraege
巻: 58 (3) ページ: 423-435