2011年11月に東京で開催した、シンポジウム:Sterbensarten der/in der oesterreichitschen Literaturをもとに本年はそのテーマを掘り下げ、成果物となるシンポジウム論集編集を進めた。 Sterbesarten(死の迎え方)というテーマは、イルゼ・アイヒンガー後期の作品群の草稿のタイトル(後にSchattenspieleに変更になる)Sterbensarten(死の迎え方)から取ったものであるが、これは1947年に刊行された長編小説『より大きな希望』から2006年に刊行された『サブテクスト』まで、60年に渡るアイヒンガー文学の初期から後期の作品に一貫して流れるテーマであるだけでなく、特にドイツのドイツ語文学と比較した際に浮かび上がってくるオーストリア文学を特徴づけるテーマでもある。 シンポジウム参加者である研究協力者との比較研究においてはツェラン、30年代のオーストリア文学、イェリネック、バッハマン、シュティフター、へルター・ミュラー、トゥリーニ、などとの比較においてアイヒンガーのオーストリア文学における位置づけを明らかにする中で、アイヒンガーの文学手法の特徴を探っていった。 このテーマは、ドイツ語圏文学における、ドイツ文学とオーストリア文学との差異を探るだけでなる、ドイツ語圏文学が共通して体験した、第二次世界大戦と戦後に「文学の0年」とも呼ばれたドイツ語文学における過去との断絶、そして、その中で戦前から流れる継承の要素を浮き彫りにするものである。 2012年はそのシンポジウムにおける研究発表内容を受け、研究協力者と意見交換をしながら、その成果を論集にまとめる編集作業を行った。 成果の詳細は、2013年にStauffenburg出版から刊行される。
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