研究課題/領域番号 |
22520330
|
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
濱中 春 法政大学, 社会学部, 准教授 (00294356)
|
キーワード | 独文学 / 美術史 / 18世紀 / 科学史 / リヒテンベルク / リヒテンベルク図形 |
研究概要 |
本年度はリヒテンベルクの自然科学研究とスケッチというテーマをとりあげた。 1.自然科学 リヒテンベルク図形について、同時代の物理学テクストと図版を約70点収集し、この現象にかんする発見期の知における言語とイメージの関係を、記述、図版、転写、メディア、記号という5つの観点からを考察した。その結果、リヒテンベルク図形は電気によって生み出された粉末でできた図形という特殊なイメージであるからこそ、同時代の博物学、天文学、気象学、化学、色彩論、美学、記号論などさまざまな学問分野とテーマを共有し、近世から近代への科学のパラダイム転換を独自のかたちで映し出していることが明らかになった。二次文献を調査した結果、この時期のリヒテンベルク図形の受容史はこれまでほとんど研究されていないことが判明したため、本研究には研究史上の欠落を埋めたという意義がある。 2.スケッチ ゲッティンゲン大学図書館に所蔵されているリヒテンベルクの手稿におけるスケッチを調査した。その結果、スケッチが文字テクストのなかで非常に識別しにくいこと、つまりテクストとイメージの境界が流動的であることが確認された。また、とくに自然科学にかんするスケッチのなかには、認識を線と点の種類を利用して端的にあらわし、さらに図像メディアの限界を言語で補うという、テクストとイメージの幾重もの相互関係が見出された。リヒテンベルクのスケッチもこれまでほとんど研究されておらず、本研究にはその先駆けとしての意義がある。 3.その他 ゲッティンゲン大学に所蔵されているリヒテンベルクや同時代の実験物理学機器を調査し、機器の製作と実験は手作業という点で共通していたからこそ、科学者と職人の分離という現象が並行して起こったことが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的にそって計画していたように、リヒテンベルクにおける言語とイメージの相互作用について、予定していた5つのテーマのうち、前年度は美術史と観相学、本年度は自然科学とスケッチというテーマをとりあげて考察を進めてきたため。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は雑誌メディアという5つ目のテーマをとりあげるとともに、研究全体の総括をおこなう。雑誌メディアについては、18世紀の雑誌における挿絵の種類や役割を二次文献を通して確認した上で、リヒテンベルクが編集した『ゲッティンゲン懐中暦』における図版を調査し、そのジャンルや目的と、言語テクストとの関係を考察する。研究全体については、本研究でとりあげたイメージをいくつかの範疇に分類して、言語との関係を整理したい。
|