研究の最終年度として、過去四年間の成果を総括しながら研究をまとめた。 レッシングに関しては初期の『カルダーヌス弁護』のテクスト分析、『カルダーヌス弁護』とベール『歴史批評辞典』との連関、18世紀ドイツにおけるベール受容の諸相、ならびに、『カルダーヌス弁護』から晩年の『賢者ナータン』に至る非ヨーロッパ世界のモチーフの展開の道筋の解明を行った。ヘルダーに関しては、『人類歴史哲学考』のテクスト分析、そこに見られる非ヨーロッパ世界把握をめぐる論点の考察、それとベール、ゲーテ、レッシング、カントとの連関を解明し、これを通して、非ヨーロッパ世界把握に関してのレッシングとヘルダーの間の連続性を明らかにした。クニッゲに関しては、『人間交際術』のテクスト分析、クニッゲとカント、シュライアーマッハー、レッシングとの連関を解明し、ドイツ後期啓蒙における〈社交性〉のモチーフをその屈折とともに浮き彫りにした。それによってレッシング、ヘルダーの非ヨーロッパ世界把握の背景を考察した。 和辻哲郎に関しては、和辻のヘルダー理解の解明を引き続き行った。『風土』のテクストの生成過程、ならびに、上記『人類歴史哲学考』の考察から明らかになった内容を踏まえた形での和辻のヘルダー理解の特質の解明を行った。鴎外に関しては、レッシング受容の特質の解明を引き続き行った。 これらの作業との関連で、引き続き関連文献の収集を行った。また、和辻の生誕地、姫路市仁豊野の踏査と関連文献の収集を行った。研究会を年度を通して開催し、研究成果の発表、内外の関連分野の研究者との討議をおこなった。 上記の研究の内、クニッゲ、レッシング、ヘルダーについて、また、和辻のヘルダー受容について、研究成果を公表するための作業を開始した。
|